オナニー
「今日でラストです。引退することにしました」
と、僕が入室したライブチャットのチャットレディが突然の告白を始めた。僕が彼女にアクセスしたのは単なる偶然である。オンライン一覧をザーッと眺めていて、暇そうな女の子を選んだだけだ。何の思い入れもない。それが、何だか一大イベントに出くわしたかのようなタイミングだった。
ただ、ギャラリーも数えるほどしかおらず、会話内容を見るに固定層がついていた女の子でもないらしい。サイト内に提示されているアクセスランキングでも下位の下位だ。おそらく、掃いては捨てるほどいるたくさんのチャットレディの内の一人と言った認識で良く、少なくとも、惜しまれつつ引退・・・という女の子でもない。人気がなくて自然と消えていくタイプの女の子の一人だ。
けれども、そんな節目に偶然とはいえ出くわしたことは何かの運命ではないだろうか。今日でラストと言うことで、最後は開き直ってライブチャットのオナニーでも見せてくれるのではないかな?などと興味深く彼女を見ていた。
たぶん、他のギャラリーも同じような感じっぽかった。一応「おつかれさまー」とか「元気でねー」とか言っているが、長く彼女を見てきたような人間の言葉ではない。「最後にオナニー見せて!」と言っている男がいたが、まあ、皆、考えていることは一緒だ。
すると、女の子は「そうだね。せっかくラストに来てくれたんだから」と、オナニーすることを宣言した。これは儲けものだ。引退するこの女の子のオナニーが見れる機会はもう永遠に訪れない。ある意味、僕は歴史的瞬間に立ち会ったと言えるだろう。僕は、彼女が服を脱ぐ瞬間をドキドキして待った。
だが、彼女は服を着たまま、胸に適当に手を置いて「アンアンアンアン」と棒喘ぎを披露した。ライブチャットのオナニーごっこである。すると、先ほどまでにぎわっていたライブチャットが急に静かになって、一人、また一人と退室していった。
人気が出ずに引退するチャットレディなんてこんなものなのだろう。僕はログインしたことをちょっと後悔した。
女性のオナニー
オナニーをしない女性